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硫黄島での声「太陽」「風」「雨」「島」…..そして「猫」

硫黄島

正式には「いおうとう」だそうです。

本州とグアムのちょうど真ん中に位置していて、そこで行われたアメリカと日本との激戦はクリント・イーストウッド監督の

「硫黄島からの手紙」で映像化されています。

心残したまま疎開した島民の人たちは、戦後火山活動など様々な理由で戻ることは出来ず、

現在は航空自衛隊硫黄島基地隊の方たちが訓練をされています。

今回、私はそこで部外講師という立場で、「リンクレイターヴォイスワーク」を隊員の方たちに提供する機会をいただきました。

女性ばかりの宝塚歌劇団で大人数のヴォイスワークは経験はありますが、57名、しかも28歳から54歳までの屈強な男性ばかり!企画してくださった硫黄島基地隊司令丸山一等空佐と準備にかれこれ半年は費やしました。

 

今回の受講者の隊員の方たちは、様々な土地から硫黄島基地隊に赴任されて3週間ここで寝泊まりして日々訓練されています。

1週間内地に戻り、またこちらへ。これを2年間続けるそうです。

いわゆる娯楽の無い島で寝食を共にしつつ厳しい訓練を続ける。体力はもちろん、精神面でもハードルは高いのだと思います。

部隊と舞台。そのストイックな修練と緊張感は、私の母体の宝塚にも共通するところがあります。

スタートは、ボール投げから始めることにしました。

「ボールを相手に渡す」というシンプルな動作を続ける過程に、緊張と弛緩、他者をイメージ(視覚化、味覚など)を使うことで瞬時に認証し様々な声を発声出来る、止まった状態だけでなく、動くことで前方のみではなく、サイド、後ろなどの空間感覚と距離感覚を作り上げる。渡すボールを増やしていくこと(負荷)、且つ続ける明確な数字(20回)を与えることで、苦手な人に対するサポートと全体責任が自然派生する。

いわゆるウォーミングアップであり、「遊び」です。上手くいけば、かなり難度な課題を出しても、メンバーが小宇宙のようになる事ができます。

このボール投げは、私が実際アメリカとスコットランドでリンクレイターヴォイス資格講師トレーニングの合宿の時に毎日やったものです。世界各国から来た違う言語の15名が、一つになれるおもしろいワークで、宝塚歌劇団研究科一年生の演技レッスンでも毎回お題を変えて難易度を高くして行きました。

最初緊張して、隊員さん、ぼとぼとボールを落としますが、さすが、連携プレーは得意。続きはじめます。

そして、これが起爆剤になるのですが、「キウイ!」「さくらんぼ!」など、一見その方に似合わない(失礼!)呼び名が飛び出すことで、その意外性で壁は一気に崩れるものです。

一番楽しんでいたのは私かもしれません!

ボール投げでひとしきり皆さんをほぐし、かつ様々な気づきを言語化したあとは、

リンクレイターヴォイスの最初の「脊椎」の認識。

今回は人数が多いので、楽団メンバーのダンサー山下尚美さんと整体師の山﨑克弘さんにもアシストしてもらいます。

日頃、筋肉を固く緊張に気付かないくらい緊張している隊員の方たちの身体を柔らかく伸ばしてくれるのは…..

「重さ」と「重力」

そういった意味では、島という大地でこのワークが出来ることに、私もとても興味がありました。

最終的には、皆さんの居方(姿勢)が、すっきりと変わります。

最後の感想では、

「脳がリラックスした」

「肩が楽になった」

「視界が広がった」

「響く声がわかった」

など、日々、ハードな毎日をやっている隊員のみなさんに新しい視点での声と身体の概念が与えられたことは今回の企画の大きな目標の達成です。

そして、宴。

サプライズは、隊員の皆さんがこの日のためにエイサーを練習していて下さったのです。

共に歌い、踊り、食べて飲む。人と人をつなぐ大切なもの。

二日目の課題も出せました。

それは、原初的な「声」が自由になったら、こんどはそれを「言語」で体験して欲しいと思って企画したもの。

5人の有志にシンプルな詩を自作してもらいます。お題は「太陽」「風」「島」「雨」そして

この島には島猫が沢山いるので、「猫」!

いきなりこういう振られ方をして、隊員の方、戸惑っていらっしゃいましたが、2つ返事で「やります!」と。

期待は大きくなり、次の日へ。

二日目

エイサー部と島猫楽団の楽器を使います。いわば言語と音のセッションです。

 

「詩」に、こんどは動きと音を入れていきます。

これは他者を聴かなくてはならず、全員が全力で頑張ってしまうと、声(言語、詩)を消してしまいますし、

かといって、単調なリズムではなにも面白くありませんし、言語も触発されません。

お互いを誘発しあい、パフォーマンスはおもしろく生まれてきます。

そして、野外での発表。

隊員のみなさんの自作の詩は、どれもその人の言葉で、素晴らしかったです。

この島に立ち、その人が生きてみて生まれる言葉。

そこに仲間と創る音と動きと喜びが共鳴する。

私はそういうのが大好きです。

最近思うのは、本当の師匠は結局は自然なのではないかしらと。

私たちもこの日のために「島猫楽団」を編成して歌をお返しに。

選んだ曲は、宝塚の「すみれの花さく頃」

島崎藤村作詞「椰子の実」

沢山の方たちがうちに帰りたいという思いでその生命を散らしたこの島だから

「埴生の宿」

硫黄島基地隊mustの歌、「硫黄の島」を。

歌詞にすべての島の情景が繋がりました。

兵士たちもかつて満天の星の下で故郷を思いながら歌われたのかもしれません。

いえ、歌ったに違いありません。

 

~埴生の宿~

埴生の宿も我が宿

たまのよそおい うらやまじ

のどかなりや 春の空

花はあるじ 鳥は友

home home sweet sweet home

there is no place like home

there is no place like home

文読む窓も 我が窓

瑠璃の床もうらやまじ

清らなりや 秋の夜半

月はあるじ 虫は友

home home sweet sweet home

there is no place like home

there is no place like home

 

合掌

PS:そのあとの硫黄島での体験は私信としてNoriko’s Blogにアップしています。

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